認知症予防・改善のための経頭蓋脳電気刺激の可能性試験
2023.01.31
ライフサイエンス 人文・社会科学
認知症
MCI
認知症予防・回復

概要
高齢者人口のさらなる増加に伴い、高齢者における認知症患者の割合は上昇している。65歳以上の高齢者のうち、5年間で40%は認知症に移行すると推計され、認知症ではなくともその前駆段階の軽度に認知機能が低下している軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment: MCI)高齢者はおよそ65歳以上で4人に1人が該当する。そのため、認知症高齢者をこれ以上増やさないための対策を講じることが急務であるが、その根治療法はなく、症状が進行すると健常レベルにまで回復することはほぼ不可能である。 現在、認知症の前駆段階である軽度に認知機能が低下した状態(MCI)でスクリーニングできれば、何らかの介入により健常レベルへ回復する手立てがある。一方、軽度であっても認知症にまで進行すると、多くの社会活動における遂行能力が低下するため、認知的な刺激を与えるための能動的な介入は不可能である。認知症から少なくともMCIにまで回復できる手立てがあれば、健常にまで回復できる可能性も高まる。特に軽度認知症の場合、多くの認知症の基盤となるアルツハイマー病の進行もMCIと大差ない場合も多く、何らかの介入によって少なくとも部分的な機能的な回復が期待できる。 経頭蓋電気刺激(tDCS)は、頭皮上から非侵襲的に脳に電気刺激を加え、脳内神経活動を改善できる有効な手段の一つである。実験動物や健康な若年者において、一過性の認知機能の向上が認められ、能動的な活動が要求される運動介入が困難な認知症への応用も可能と考えられるが、認知症に対する効果はわかっていない。 本研究では、軽度認知症からMCIまでの回復に資するtDCSの効果について明らかにし、認知症から健常状態まで回復するための介入システムを構築する。
研究者
山田 孝禎 | 教員養成領域 |